WTのフィジー大会。写真はCJ・ホブグッドのビッグフローターです。これぞWT選手ならではでして、QSの上位選手、ましてや日本のプロがどう頑張ってもできない演技です。
どうして日本のプロはWTに行けないのか。行けないどころかWTはどんどん遠ざかっているように思えます。ブラジルや南アフリカといったサーフィン途上国からは次々とWT選手が出ているというのにです。日本はそれらの国よりもサーフィンの歴史が長いはずです。
その答えがビッグウェイブです。日本のプロ選手はビッグウェイブでの演技にめっぽう弱い。たしかに日本にも世界に名を知られるビッグウェイバーは何人かいます。しかしここで言っているのは「大波に乗る」ということではなく、「大波で演技する」ということです。
「ただテイクオフすればいい」ということであれば大波専用のガンと呼ばれるボードを使えばいいのです。もちろん私たちのレベルではとうてい扱える代物ではありませんが、経験と体力に長けたサーファーであればサイズへの挑戦が可能でしょう。
しかし、ガンを使ったサーフィンは動きが緩慢であるためにサーフィン大会では勝てません。テイクオフしたらそのまま真っすぐ滑って終わりだからです。昔ならガンでも使わないと乗れなかった波に、世界で戦う今のトップサーファーたちは普通のショートボードで乗っています。
ビッグウェイブはなぜ難しいのかわかりますか。それは波の中に波があるからです。大きな波は小さな波の集合体のようなもの。遠目には一つの大きな波に見えても、実際に近寄っていくと波の表面(フェイス)に小さな三角波が散りばめられています。
その小さな三角波を上手に処理しながら、母体である大波をメイクしていくのは大変です。例えるなら、スキーのモーグルでゲレンデ全体が大きくうねっているようなものです。
ケリー・スレーターが肉体改造したって話を聞いたことがあるでしょうか。彼は若い時にはかなりスリムでしたが、一時期を境にマッチョ体型に変身しました。今の世界ではそうでないと戦えないからでしょう。高度な演技を支えるのは、サッカーでいうところの「フィジカル」。
マラドーナは小さい体のくせに驚異的なフィジカルだった、というのは有名な話です。日本のサッカー選手はそういったフィジカルの重要性に気づいているから一歩一歩と世界に近づいているのだと思います。
- ビッグウェイブでのテイクオフ
- プローンの態勢からノーズを落としながら、両足を引きこんで立ちます。「テイクオフのときボードはほとんどフラット」というのがセオリーですが...
- デカ波でのボトムターン
- テイクオフしたら、まっすぐ下に降りてくる...これがダウン・ザ・ライン。波がバカデカくなると恐怖のあまり、私たちはすぐに横に走ってしまいます。
- 「ソリッドな波」とは
- 脇田氏がよく使うサーフィン用語に「ソリッドな波」というのがあります。日本ではまだ馴染みがないので意味がわからない人が多いと思います。
- 新島で豪快なマネーターン
- 村上舜がファイナルで見せたマネーターンです。実に深いボトムターンからのフィンアウトは圧巻でした。