サーフィン小説

テイクオフ成功の法則



サーフィン青春小説 1Q82

未知との遭遇

1982年5月、東京で大学生活3年目を迎えた竹井和男は千葉の東浪見海岸に来ていた。どこか陰りのある表情でガリガリに痩せた色白のその男と、初夏の日差しが透けて金色に光る長髪を風になびかせる小麦色の肌の男女たちが躍動するその場の光景は絶対に相容れないものだった。世の中にそういった人種がいることは知ってい...

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東浪見の女

それまでの自分にはまったく縁のなかった世界にやってきた和男。大げさかもしれないが、それはまるで意図せずアメリカという大国に渡ったジョン万次郎のような心境だった。ビーチを見渡せば、女優とかファッションモデルのような美女があちこちにいて、そのはち切れんばかりのすべすべの肌をオイルで丁寧に焼いていた。和男...

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巨乳の沖縄娘

福岡市郊外にあった全寮制の予備校は今の常識では到底考えられないことだが、3階立ての校舎の1階に授業室があって2階が男子寮、そして3階が女子寮だった。管理人もいなかったので当然のように半年もすると3階のほとんどは同棲部屋になっていた。和男はそんな風紀の乱れた状況に「俺は惑わされん」と豪語していたが、年...

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ひ弱な体格

和男はひ弱な体格ではあるが子供のころから身長はクラスの中でいつも一番高い方だったので、身長がものをいうスポーツはそこそこできた。といってもそれはほんの遊びレベルにすぎなかった。高校のときには背の高い選手を探していたバレーボール部の監督に勧誘されて何も考えずに入部した。しかし、結局は1年ももたなかった...

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シャクに障る男

運転席からドアを蹴飛ばすように外に出た安田が「竹井さん、波見ましょう」と言って助手席で金縛り状態になっている和男を誘った。安田は和男と同じその年で22歳だったが、大学の学年が1つ下ということで和男を立てて敬語を使った。和男にしてみればタメ口の方が気が楽だったが、あえてその上下関係の状況を壊すのも面倒...

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あの波はまだ無理だ

「阿部ちゃん、あの波」と大声で安田が叫んだ。「ほらほらあれあれ。あ、今割れた。いけるいける。まだいける、まだいける...」と興奮しながら安田が実況するが、和男にはまったくそれが理解できなかった。波は全部同じに見えたし、安田が指をさしているその波がどう特別なのかなんてちっともわからなかった。そのときの...

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最初のサーフボード

「今日は作田だな」と阿部が言った。この4人グループのリーダーが阿部であることをそこで和男は悟った。車は安田が持っていたが、あとで聞いたら阿部がその大半を出して買ったものらしい。高田馬場から千葉の海まで高速道路を使っても車で3時間以上かかる。その車の中で運転しながらも安田は途切れなく話をした。完全にM...

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恐怖の作田ポイント

「やれやれ、こりゃ特攻隊だな」と田崎が言った。緊張している和男を更に怖がらせようとする田崎が憎らしかった。沖まで延びるテトラポッドの堤防に向かって歩く4人だが、和男の歩調はしだいに遅くなっていった。堤防の先端では大きな波が砕け散り、派手に波しぶきを飛ばしているではないか。無理だと思いながらも足を止め...

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俺は生きている

かなり長い時間暗闇の中にいたような気がする。そして突然周囲が明るくなって意識が回復した。海面の上に顔を出した和男は思い切り空気を吸いながら「俺は生きている」という実感、というよりも充実感を体中で感じ取った。「こんなところで死んでたまるか」と、どういうわけか元気が出てきて、そして冷静になった。見ると、...

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サーフィン同好会「ラ・ディーグ」

車まで戻ってみると、すでに田崎が海から上がって犬と遊んでいた。途中セブンイレブンで買った牛乳パックの口を全開にして、どこの誰が連れてきたのかもわからない犬にゴクゴクと飲ませた。ちなみに「コンビニ」という言葉は当時はまだなく、そういった規格化されたチェーン店舗の代名詞が「セブンイレブン」だった。そんな...

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ときめくサーファーガール

田崎は海から上がってきた和男に何も声をかけず、一心に犬とジャれていた。近くにはキャッキャッと笑いながらそれを見ている三人の女性がいて、田崎の知り合い、というよりも安田のサーフィン仲間のようだった。その中の一人はストレートのロングヘアーが美しい女子だった。その他二名がごく普通だっただけに余計にその彼女...

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サーフィンのどこが面白いのか

高田馬場の駅近くにはアルバイト斡旋センターがあって、和男もそこで幾度となくアルバイトの仕事にありついていた。今のようにアルバイト情報誌はない時代だった。和男が東京で経験した仕事にはいろんなものがあったが、その中で最も長い期間に渡ってやっていたのが医療施設専用カーテンのレンタル及びクリーニングの仕事だ...

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高田馬場の学生寮

和男は東京世田谷の明大前駅南口にある学生アパート群の一角に住んでいた。明大の学生はみんなそこに住むものだと和男は思っていたが、実際にはもっと都心寄りのマンションを借りて住んでいる同級生もいて、そんな彼らと付き合うと自分が風呂なしアパートに住んでいることに劣等感を持った。アパート探しを手伝ってくれたの...

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高田馬場の学生寮(コピー)

和男は東京世田谷の明大前駅南口にある学生アパート群の一角に住んでいた。明大の学生はみんなそこに住むものだと和男は思っていたが、実際にはもっと都心寄りのマンションを借りて住んでいる同級生もいて、そんな彼らと付き合うと自分が風呂なしアパートに住んでいることに劣等感を持った。アパート探しを手伝ってくれたの...

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御宿

作田の海を後にすると、車は2台連なって南下した。和男を乗せた10年落ちのトヨタ・カリーナの後ろを付いて走るのは能勢恵子のホンダ・シビックで、その後部座席には安藤美枝と万田久美子が乗っていた。能勢恵子はアパルト系デザイン学校の生徒で、安藤と万田は上智短期大学の学生だったが、この三人もまた早稲田のサーフ...

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