サーフィン小説

テイクオフ成功の法則



未知との遭遇

1982年5月、東京で大学生活3年目を迎えた竹井和男は千葉の東浪見海岸に来ていた。どこか陰りのある表情でガリガリに痩せた色白のその男と、初夏の日差しが透けて金色に光る長髪を風になびかせる小麦色の肌の男女たちが躍動するその場の光景は絶対に相容れないものだった。

 

世の中にそういった人種がいることは知っていたが、和男が真近で彼らを見るのはそのときが初めてだったし、ましてやいきなりそのど真ん中に我が身を投じることは予想していなかった。バイト先で知り合った男に誘われ、ちょっとおもしろそうだなと思ってただの暇つぶしでノコノコやってきてしまったからだ。

 

 

 

 

それは後年になって明らかになることではあるが、まだ見ぬバブル経済へと突進していく高度成長期の日本にあって、若い男女が熱狂するそのファッション文化(カルチャー)の到来もまた前夜祭としての一つのステップだった。

 

その文化とはサーフィンである。今になって思い返せば、あのころの熱気は尋常ではなかった。正確に言うなれば、「サーフィン」ではなく「サーファー」が文化であって、流行語だった。そしてこれに派生した流行語が「陸(おか)サーファー」だった。

 

 

 

 

新宿や渋谷を闊歩するサーファーの9割以上が陸サーファー。陸サーファーは当時もはや公認されたものであって、実際に波乗りができるかどうかはあまり問題ではなかった。要するに、サーファーらしい格好をするのが重要なのであって、身に着けているブランドや着こなしが評価された。もちろん茶髪と小麦色の肌は三種の神器として必需品だったので、美容室やら日焼けマシンやらに相当な金がかかったはずだ。渋谷にはサーファー以外入店お断りのディスコがあって、田舎から出てきた金もなくてファッションセンスもない男女には、自分らにはとうてい縁のない竜宮城のように思えていた。

 

 

 

 

つづく...(この小説はフィクションです)



コンテンツ
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