サーフィン小説

テイクオフ成功の法則



最初のサーフボード

「今日は作田だな」と阿部が言った。この4人グループのリーダーが阿部であることをそこで和男は悟った。車は安田が持っていたが、あとで聞いたら阿部がその大半を出して買ったものらしい。

 

 

高田馬場から千葉の海まで高速道路を使っても車で3時間以上かかる。その車の中で運転しながらも安田は途切れなく話をした。完全にMCだった。阿部は安田に振られたら口を開くていどで、頭は賢そうだけれど安田の子分なんだろうなと思っていただけに、その場の二人のやりとりを横で聞いていた和男は気持ちの整理をしなければならなかった。

 

 

阿部のその一言で即決。すぐさま後戻りすると、4人は一斉に車に乗り込んだ。出鼻をくじかれたにもかかわらず北上する車の中でも安田は終始ご機嫌で、後部座席の上に立ち上がってターンの動きをしながら「ひゅー、ひゅー」と大声を張り上げた。運転は田崎がしていたが、免許を持っているのかどうか怪しかった。

 

 

途中で天井に乗っている4枚のサーフボードがガタガタと音をたてたので安田は田崎に車を止めさせた。ベルトがゆるんだと言って安田が外に出ると、田崎と阿部も外に出てベルト調整を始めた。和男は状況がよくわからなかったのもあってそのまま助手席に座っていると、「竹井さんも手伝ってよ」と安田が怒鳴った。すると田崎が「竹井さんは天井に載せちゃいましょうか」と冗談を言った。まったくムカつく野郎だった。

 

 

 

 

 

 

 

東浪見は真東を向いているが、そこから8キロほど北上したところにある作田海岸は少し南向きなので東からのダイレクトの波を幾分かわした。とはいえ、その日は波数が多くて岸近くは白波で占領されていた。「テトラの横から簡単に出れますよ」と安田が言うが、何を言ってるのかわからない和男だった。

 

 

ウエットスーツを着るのは生まれて初めてだったので苦戦して腰に巻いたタオルが取れた。「汚いケツ見せないでくださいよ」と阿部が笑いながら言った。阿部のその言葉は緊張で震える和男を少しだけ和ませてくれた。

 

 

そして手渡されたサーフボードは今思い返せば6フィートだっただろうか。シングルフィンのラウンドピンテール。安田が最初に中古で買ったボードだという。黄色く変色してデッキもボトムも凹んでいたが、クラッシュした部分はちゃんとリペアされていた。安田はとても几帳面な性格で、そういった細かい修理とかの作業を自分でまめにやる男だった。

 

 

のちに和男は安田からリペアの方法を教えてもらうのだが、アパート管理人が和男の部屋に合鍵でいきなり入ってきたのはそれが原因だった。使っていたシンナーが隣の部屋まで漏れて、隣人が管理人に通報したのだ。「隣の部屋でシンナーやってます」とでも騒いだのだろう。

 

 

つづく...(この小説はフィクションです)



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